インタビュー

インタビュー

株式会社はなの言語聴覚士Speech-Language-Hearing Therapist

現在、全国で600万~800万人の方が言語聴覚士を必要されているといわれる日本。
しかし、全国で言語聴覚士が不足しているというアンバランスな状況は社会問題にもなっています。
そのような状況の中、はなの言語聴覚士に語ってもらいました。

齊藤 祐一郎(さいとう ゆういちろう)

言語聴覚士
2019 年4月入社

関口 直樹(せきぐち なおき)

言語聴覚士
2019 年10月入社

リハビリといえば作業療法士や、理学療法士がイメージされやすいと思いますが、
なぜ、言語聴覚士を目指そうと思ったのか、きっかけを聞かせてください。

齋藤

前職はスーパーの店員として働いていましたが、次に目指したのは、介護やリハビリの仕事でした。資格を調べたり、介護系の専門学校の説明会に出席した際に、担当の方から言語聴覚士の資格の説明を聞きました。
そこから、自分で言語聴覚士について調べ、理学療法士などの身体を動かすリハビリとは違い、話したり食べたりするリハビリである事を知り、それに興味を持ち、目指そうと思いました。

関口

前職は書店員をしていました。その時に、世界的な免疫学者である多田富雄さんが脳梗塞を発症し、そこから生還してこられた状況を記録した著書「寡黙なる巨人」を読み、その中で言語聴覚士という職業を知り、やってみようと飛び込んだのがきっかけです。

資格を取得する際の専門学校のことや、勉強方法などのエピソードはありますか?

関口

通常は資格を取得するために、専門学校は3~4年、大学だと4年かかるのですが、私も齊藤さんも、2年制の大卒コースでした。そのためカリキュラムがぎゅっとコンパクトに詰まっていたのでハードでした。
私は朝の9時~5時まで学校があり、そのあとは課題をやる、という生活でした。

齋藤

通常3~4年かかる内容を2年でやらなければならないので、かなり詰め込みではありました(笑)。
早く資格を取りたい方には良いかなと思います。

2021年3月現在、全国で言語聴覚士はおよそ36,000人いるとされ、
いくつかの分野があるとのことですが、得意な分野はありますか?

関口

では、リハビリテーションの分野からご説明します。リハビリは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士とあります。主な違いとしましては理学療法士と作業療法士は歩いたり腕を使ったりなど身体のリハビリを担当します。言語聴覚士は食べること、食事のフォローや脳卒中などで高次脳機能障害(※)などにより話すこと、考えることが難しくなってしまった方のリハビリを担当します。分かりやすく大まかに言いますと、首から上のリハビリが言語聴覚士になるイメージです。

※高次脳機能障害:けがや病気によって脳に損傷を負い、知的な機能に障害が出て日常生活や社会生活に支障をきたす状態。

齋藤

言語聴覚士というと、聴くリハビリをイメージされる方も多いのですが、食べるリハビリもあり脳梗塞などにより、お口などが上手に動かせなかったり、言語がスムーズに出てこなかったりする方のリハビリもします。はなで働く前は小児の発達障害を担当していました。また経歴的には話すリハビリを長くやっていましたので、話すリハビリを得意とします。

関口

現在の仕事では嚥下障害(※)の方を担当することが多く、必然的に日々嚥下について勉強する機会が増えました。今、得意な分野というと嚥下に対するリハビリです。

※嚥下障害:
嚥下とは口の中で食べ物を飲み込みやすい形にし、食道から胃へ送り込むことをいいます。嚥下障害とは、口の中のものを上手く飲み込めなくなる状態のこと。

訪問看護ステーションはなで働くきっかけや、現在の仕事内容を聞かせてください。

関口

はなで働く前は、回復期リハビリテーション病棟で言語聴覚士として働いていました。病棟で勤務すると、かちっと機械的に勤務しているように感じ、たまに外に出たくなる時もありました。また、病院だと患者さんが病院に合わせる感じがあったのですが、訪問看護はこちらがご利用者様の生活に入り込んでいく、ご利用者様がメインでリハビリをするイメージがあり興味を持ちました。そんな時にはなへ見学に行き、すでに働いている言語聴覚士の方から職場の雰囲気のよさややりがいについて聞いたことがきっかけとなりました。

齋藤

私は先ほども言いましたが、小児リハビリテーションで発達障害のリハビリ等を担当していました。そこから、成人のリハビリにも興味を持ちまして、訪問看護ステーションはなで働いている専門学校の同級生に相談したことをきっかけに、訪問看護に興味を持ち働いてみようと思いました。

関口

具体的な仕事内容は嚥下障害、失語症(※)、高次脳機能障害の方のリハビリテーションを担当しています。ご自宅に伺いご利用者様のできないことや、したいことを評価し分析し、できる限り望みを叶えられるよう対応策を実施しています。具体的には、うまく食べられない方には安全な食事形態の提案および嚥下訓練を行い、うまく話せない書けない等の失語症の方には絵カードやプリントを用いた訓練と、お話しを含めたコミュニケーション機会の提供、その他の高次脳機能障害の方にも机上の評価、訓練をしています。また落ち込みのある方に対しては傾聴し精神的な支援をすることもあります。

※失語症:脳梗塞や脳出血、けがなどによって大脳の言語領域が傷ついたため、言葉が上手く使えなくなっている状態。

齋藤

実際の仕事で多いのは嚥下訓練です。嚥下訓練は大きく2つに分かれます。直接食べたり、飲んだりすることの直接嚥下訓練と、お口の体操などの間接嚥下訓練になり、ご利用者様の嚥下障害の程度によって、その2つを上手く組み合わせて行います。
話すリハビリは、絵カードを使ったり、早口言葉での訓練。また、高次脳機能障害の方のように、集中するのが難しい方などはテキストを使ってリハビリをしたりします。

実際に二人が使用しているカードやテキスト

現場でのやりがいや難しいと感じる事、
訪問看護の言語聴覚士として働くエピソードなどを聞かせてください。

齋藤

リハビリを続けているご利用者様が上手に話せるようになったり、食べられるようになった時です。担当していた失語症の方は、お会いした当初は全く言葉を発することが出来なかった状態でした。
そこから、週1回1時間のリハビリを1ヶ月程度行った時、徐々に「こんにちは」などの挨拶が言えるようになり、そこから好きな野球チームの事など世間話などができるようになりました。全く言葉が出なかった所から、少しずつ出るようになったことが嬉しかったです。
難しいと感じることは、話すリハビリですと、カードやテキストを使った機械的なリハビリなどは上手くいくのですが、実際にそれを日常生活に上手く反映させる事が難しいと感じています。

関口

私は80代の男性でパーキンソン病の方を担当しているのですが、食事が食べられなかった時に「胃ろう(胃から直接食べ物を流して栄養をとる方法)をしたくない。」というご本人の意思がありました。それから食べる事のリハビリを2~3ヶ月程した結果、少しずつ口から栄養を取れるようになり、利用者様の症状が良くなった時は嬉しかったです。現在も継続して訪問していますが、食事を取る事ができています。
難しいと感じることは、パーキンソン病の症状の進行を止められない事です。いくらリハビリをして回復をしても、元々の病気が進行してしまうと、ご本人の希望を叶える事が難しく、もどかしさを感じています。

業界全体を見ても、言語聴覚士の需要は高く、将来性のある職種であると思いますが、言語聴覚士にどのような将来性を感じますか?

齋藤

言語聴覚士は訪問看護の中では、理学療法士さんや作業療法士さんに比べるとまだ人数が少ないですし、どんな仕事をするかなど認知度が低いと感じます。ケアマネージャーさんなど一緒に働く方々にも、もっと詳しく仕事内容を知ってもらい、言語聴覚士のリハビリを必要とする方にもっと利用して頂きたいと思っています。

関口

2021 年に発表された『アメリカの職業ランキング(U.S.NewsBestJobs of 2021 rankings) において 7 位にランクインしており、将来性を感じます。日本でも、言語聴覚士の人数はまだまだ足りていませんし、同様だと感じています。

言語聴覚士としてはなに入職したいと考えている方へ、
メッセージをお願いします。

齋藤

言語聴覚士は食べることや話すことを中心にリハビリを行っています。
病院だとリハビリを「やらされている」感覚が強いのですが、訪問看護では、いわゆるザ・リハビリというよりは、ご利用者様の「楽しくやりたい」という要望に沿ってコミュニケーションをとりながらリハビリができます。
病棟勤務より、型にハマらずにバリエーションに富んだリハビリを行えるのが、訪問看護の言語聴覚士の醍醐味だと思いますし、そこにやりがいを感じることができます。

関口

言語聴覚士は将来性もあるキャリアですし、訪問看護だとご利用者様の懐に入りながらリハビリテーションを行えるので、やりがいも非常に感じる事ができます。病気などは病院でしっかり治療をしてもらいながら、リハビリテーションの事なら私たちに任せていただけるような専門性のあるお仕事です。是非、一緒に働きましょう!